甘いものを前に、男も女もない。文化であり、大人の嗜み。

甘いものは男女平等。おいしいケーキの教科書。
「スイーツ特集」は3年くらいの課題事項でした。担当した編集、渡辺泰介から何度も企画が上がってきたけれど、タイミングがつかめなかった。その微妙な歯車が、昨年夏頃、スパッと見切れた。理屈では説明できないけれど「行ける!」という勘どころ。進めていくうちに、渡辺が「ケーキだけで行きたい」と言ってきた。おもしろいじゃないか、男性誌で「ケーキだけ」。これで「自信が確信に変わる」ってやつです。最後まで悩んだのは表紙だけ。実は特別に撮影した別の表紙がありました。その色校正を確認するために、パリコレから1日早く帰国したくらい悩んだ(ファッション業界的に言えば、パリコレ最終日を見ないのは信じられないくらいバカなんです、今年に限り。エディ・スリマンのサンローラン)。でも帰ってくる途中になぜか決断できた。近江屋洋菓子店のショートケーキのままでいい。行ける、行けます。甘いものを前にして、男も女もありません。「甘いものを前に、男女は平等である」。作ってヨカッタ。
【甘いものを前に、男女は平等である。】
”スイーツ”という便利な言葉で括られ、いつも流行に揺れ、しかもどこか女性だけのもののように扱われるお菓子。でも本当は違う。本場フランスの人気パティスリーには今も昔も老若男女が並び、レストランでは大の男がみな嬉しそうにデザートを平らげているではありませんか。そう、甘いものも文化であり、大人の嗜みです。
流行という枠を外し、もう一段深く菓子事情を見てみると、これがいま面白い。キーワードは「温故知新」。90年代末にパティシエ、という言葉を定着させたベテランシェフたちに対し、その背中を追う若手職人も続々と登場。でも、今そんな彼らから異口同音に語られるのは、伝統菓子をもっと知りたい、という興味関心なのです。
そんな時代に食べるべきはどれか。スイーツといえばもう何でもありですが、今回は「ケーキ」から選びましょう。菓子売り場の主役は、やはりケーキ。変わらぬ定番から新作まで、そこには素材に技術に、菓子のエッセンスが詰まっています。パティシエたちも、レストランの料理人とはまた違う、でも劣らず個性の光る職人揃い。
ケーキとは、パティシエとは、そしてパティスリーとは何か。さあ、まずは最初の一軒から見ていきましょうか。
東京中心なので食べたくても食べられない人がいるかもしれないけれど、
おいしさに満ち溢れている特集です。
見てるだけでも満たされる。ショーケースの前で選んでいるかのようです。
ケーキを食べたくなります。